不動産登記制度

Q&A

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不動産登記制度とは

民法の規定によると、不動産とは、土地とその定着物と定義されます。この定着物とは、おおまかには建物と考えてよいでしょう。

ある不動産が誰の所有であるか、それにどんな権利がついているのかを外見からはっきりと知ることは困難です。ですから、不動産を安心して取引するためには、不動産についての権利関係を、公的な場所に集中してわかりやすく公示することが最良の方法となります。

そのための制度が不動産登記制度であり、一般に公開される書類に不動産の物的な概況や権利関係の状況を記載して、不動産に関する各種の取引に役立てることを目的としています。

そのための書類を「登記簿」と呼び、登記簿を備えつけてある役所を「登記所」といいます。登記簿は、他人が所有している物件についてでも、誰でも自由に見たり(閲覧)、その写し(謄本)をもらうことができます。

登記所とは

登記簿を備えつけ、登記事務を行う役所を「登記所」(正確には法務局・地方法務局およびその支局や出張所)と呼び、それぞれ管轄区域が定められています。

各登記所には、その管轄区域内の不動産についての登記簿がありますから、登記簿を調査するには、まずその物件を管轄する登記所がどこかを調べることが必要です。

登記所は、平日の午前8時30分から午後5時まで業務を行っています。

なぜ登記をするのか

登記は、当事者の申請により行います(ただし、登記官が職権で登記をすることがある)。また、登記申請にあたっては、登録免許税を納めます。

ある種の登記については申請が義務づけられていますが、一般的には、登記を申請するかどうかは任意で、必ずしなければならないものではありません。

ですから、登記をすることによるメリット、または登記をしないことによるデメリットがなければ、誰も好んで登記をする人はいないはずです。しかし、不動産を買った場合には、普通はすぐに登記をします。なぜでしょうか。

それは、不動産に対する権利の変動は、登記をすることによって、はじめて第三者に主張できるからです。逆にいえば、実際に権利があっても登記をしておかないと、他人に自分の権利を主張することができないことになります。これを「登記の対抗力」といいます。

対抗力とは

登記の対抗力を説明する前に、「対抗力」の説明が必要でしょう。

「対抗」という言葉は、日常語では、紅白対抗歌合戦というように、対立する2つの主体があって、それらが「互いに負けまいと競争すること」(新明解国語辞典)で、まだ勝負の決着がついていない状態における動作を示す言葉です。

しかし、法律の世界で使われる場合には、「対立する相手に対して自分の権利を主張する」という意味になります。実際は、権利を主張して負けまいと競争している、というよりは、普通は「対抗できる」という言い方をするように、権利を主張して相手に勝った状態を意味します。

日常語の「対抗できる」は、「投手Aは、アマチュアでありながら、充分にプロの選手に対抗できる」のように使われ、この場合には、投手Aがプロに勝てるとまでは言ってはいません。さらに言えば、対抗できる主体は、本来は、その相手より弱い立場にいるというニュアンスが含まれています。

しかし、法律用語で「AはBに対抗できる」というときは、「Aの持っている権利は、Bの持っている権利に勝てる」ということを意味します。ですから、法律用語の対抗力とは、「競い合う、または競い合える力」ということではなく、「競い合って勝てる力」という意味合いの言葉です。

話をもう一歩進めましょう。次に検討することは、対抗する相手、つまり競い合って勝たなくてはならない相手は誰なのか、ということです。結論を先に言えば、対抗する相手は「第三者」であり、何について対抗するかというと、当事者間では効力が生じている権利関係についてです。

まず、「当事者」と「第三者」という概念をはっきりさせましょう。AがBに土地を売ったという例をあげて説明します。この場合、AとBは売買の「当事者」です。当事者とは、その事柄に当たる(関係する)者ですから、土地売買という事柄に関係したAとBは、A・B間の売買の当事者となります。ここでもう一人の人物Cを登場させましょう。Cは、A・B間の売買に関係していませんから、A・B間の売買については「第三者」となります。つまり、第三者とは、いま問題にしている事柄に関係のない人間のことです。

上の例で、買主Bは、売主Aに対しては、特別なことをしていなくても、自分が買ったと主張できます。買主Bにとって、売主Aは対抗すべき相手ではありません。あとで売主Aが、買主Bに対して、自分は売らなかったと前言を翻すのは、別の次元の話です。

しかし、Aが、Bに売った同じ土地をCに売ったとしましょう。ここではじめて、Bにとって対抗しなければならない相手Cが登場します。このあとの話は事項「登記の対抗力とは」で説明しましょう。

登記の対抗力とは

前項からの話しを続けましょう。

この場合、BとCのどちらが、その不動産を取得できるかは登記により決まります。たとえば、Bが先に売主Aと契約をして代金を支払った後で、Cもその不動産を買い受け、Cが先に登記をしてしまえば、Bは、自分が先に契約し代金を払っているといっても、買い受けたはずの不動産に関する権利を主張することはできません。

つまり、実際の権利変動の先後優劣よりも、その権利変動に関する登記申請受付の先後優劣が決定権を持ち、先に登記をしたほうが、その権利を他の第三者に主張できる(対抗できる)わけです。

A・B間の所有権移転という権利関係について、Bは登記をしなくても当事者Aには自分の権利を主張できますが、第三者Cに対しては、登記をすることにより、はじめて自分の権利を主張できる、つまり対抗できることになります。

この対抗力を生み出す法律要件を、対抗要件といいます。そして、権利変動の対抗要件は、登記ということになります。ただし、登記によらなくても対抗力が備わるケースがあるので注意してください。

このように、権利変動は登記によってはじめて対抗力を持ちますから、所有者の確認等の調査のために、登記簿が重要な役割を持っているのです。

登記の公信力とは

あなたが登記簿の記載を信頼して、登記簿上の所有者であるAから土地を買いましたが、実際はその土地はBの所有であったとします。

こういう事態が起こる原因としては、たとえばAが、本来は他人所有の土地であるにも関わらず、書類を偽造して、所有権移転登記を受けたように見せかけるケース等があります。

この場合、残念ながら、あなたはその土地の所有権を取得することはできません。なぜなら、もともとAはその土地の所有権を持っておらず、実態のないAの所有権移転登記をもとにして行ったあなたへの権利変動は無効だからです。

このように、登記簿に公示された内容を信じて、つまり登記簿の記載を信じて取引をしても、登記の前提である権利変動が無効なときは権利を取得できません。このことを、登記には公信力がないといいます。

したがって、登記簿は100パーセント信用できるものではありません。ただし、公信力の問題が起こるケースは実際にはめったにないので、常に疑心暗鬼になることはありませんが、登記には公信力がないということを頭に入れておく必要はあります。

短期間に繰り返し売買されているような不動産を買うときには、場合によっては、前の持主に現在の登記簿上の所有者に本当に売ったのかどうかを尋ねるくらいの慎重さが必要でしょう。

登記簿を見るときの注意点は

登記簿の内容は、現実の権利関係の変動を反映して、極端にいえば、時々刻々変化します。バブル期には、転売差益を目的とした土地転がしにより、数日のうちに何回も所有者が変わることもありました。ですから、日付が古い登記簿謄本は、現在の内容を表していない可能性があります。印鑑証明書のように3か月間は有効というものではなく、新しい登記が記入されれば、昨日取った謄本でも、意味のないものになります。

手元にある謄本作成後に、新しい登記がされていることもあるので、最新の謄本を見る必要があります。謄本の最終頁に、謄本を作成した日付が書かれているので、その日付をチェックします。

悪く考えれば、今まさに取引しようとしているときに、その取引を阻害する登記がされているかもしれません。また、謄本を勝手に書き直して改ざんすることも、たしかに不可能ではありません。しかし、このようなことを心配して、あまり疑心暗鬼になることもないでしょう。ただし、コピーを利用して改ざんする可能性があるので、コピーされた謄本には気をつけるべきでしょう。

また、取引の相手方に疑念がある場合には、司法書士に相談することをお勧めします。

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