ビルの収支計画を作成するに際し、収入項目(キャッシュイン)を予測するよりも、支出項目(キャッシュアウト)を予測することの方が難しいのが一般的です。なぜなら、収入項目は、ある程度一般の賃料相場が市場に示されていますが、支出項目とその内容は、それぞれ個別のビルに応じて異なっているからです。
支出項目は、一般に①減価償却費②維持・修繕費③土地・建物の公租公課④損害保険料⑤支払利子⑥返済元金⑦その他経費などに大別されます。したがって、これらの支出を賃料収入が上回らず、たとえば土地のキャピタルゲインでしか借入金を返済できないような事業計画では、ビル事業とてリスクが大きすぎるということになります。
ここで、たとえば、損益で赤字が拡大するような長期収支計画(シュミレーション)に基づいた事業計画では、投資収益率(ROI)の面からも適切とはいえません。逆に、安易に稼働率や賃料が上昇していくような予測を行い、収支を黒字にしているようなシュミレーションでは、賃料や稼働率が上がらず、さらに、土地の含み損などが発生した場合には、その投資自体の失敗があらわになり、企業自体のスタンスが問われることにもなります。
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