登記簿とは
登記簿は、不動産の物的概況および権利関係を知るための基本的な情報源です。いわば不動産の戸籍あるいは履歴書というべきもので、現在に至るまでの登記を見ることにより、その不動産の歴史を知ることができます。
登記簿は、土地と建物に分けてつくります。従来からの(コンピュータ様式でない)登記簿は、バインダー形式になっており、土地(緑色)と建物(赤茶色)で別になっています。1冊のバインダーに、多様の物件の登記用紙が地番の順にファイルされています。
このバインダー式の帳簿を登記簿といいますが、通常はその中に綴られている1物件ごとの登記用紙のことを登記簿といいます。
登記簿を検索するための項目として、土地については所在・地番、建物については、それに加えて家屋番号を利用します。
なお登記簿は、国が整備・保管しているという意味で公募にあたります。登記簿に記載されていることを示すために、この「公募」という言葉を使って、公募面積というような言い方をします。この言い方は、登記上(公募上)の記載内容と実際の内容が違う可能性を考えながら、登記上の記載を指し示すという意味合いで使われるケースが多いようです。
コンピュータ様式の登記事務は従来とどのように違うか
近年、コンピュータによって登記事務が行われる登記所(コンピュータ庁)が増えてきており、その場合には、登記内容は用紙(登記簿)に記載されず、直接磁気ディスクに保存されています。
つまり、従来からの紙に書かれた登記簿は存在しないことになりました。結果として、登記簿の写しである「謄本」という概念もなくなり、その代わりに保存されている内容を印字出力した「登記事項証明書」というものが発行されます。
また、従来は右からの縦書きでしたが、左からの横書きの様式に変更されました。
従来の様式では用紙に書き込むため、記入内容は時間的順番に並ばざるを得ませんでした。しかしコンピュータでは、内容の入れ替えができるため、関連する記内容(主登記と付記登記)は、時間的順番を入れ替えて1ヶ所にまとめて印字出力できるようになっています。
さらに、従来は表題部・甲区・乙区それぞれに1枚ずつ用紙を固定的に使っていましたが、コンピュータ様式では、表題部から順にスペースを詰めて印字されます。
以下、主として新しいコンピュータ様式にもとづいて説明します。新様式の書類は登記事項証明書といいますが、従来どおり謄本と呼び慣わされていますので、本サイトでも新旧両様式とも一括して「謄本」と呼びます。
なお、従来の登記簿からコンピュータ様式に移行した場合には、登記内容を移記したことを示すために、「昭和63年法務省令第37号附則第2条第2項の規定により移記」等と記載されます。
登記簿の構成は
登記簿は、原則として、「表題部」「甲区」「乙区」という3つの部分から構成されています。
ただし、甲区・乙区の登記申請は当事者が任意におこなうものですから、甲区・乙区に関する登記がないときは該当部分がありません。つまり、抵当権等の設定がなければ乙区はありませんし、まれに所有権保存登記がされていない場合には甲区もありません。
表題部にする登記を「表示に関する登記」といい、甲区・乙区にする登記を「権利に関する登記」といいます。建物を新築したときは、建物表示登記をして、その建物のために新たに登記簿をつくります。この場合の建物表示登記は、いわば、権利に関する登記を入れるために登記簿という箱を作り、それに名前をつけることにたとえられます。ですから、表示に関する登記をしない限り、権利に関する登記をすることはできません。
「表題部」「甲区」「乙区」には何が記載されているか
「表題部」は不動産の物的概況を示す部分であり、土地については所在・地番・地積等が、建物については家屋番号・種類・構造・床面積等が記載されています。しかし、その登記の記載内容は、必ずしも現況と一致していないことがあります。
「甲区」には、所有権に関する事項、すなわち所有権保存、所有権移転およびその仮登記ならびに処分の制限等に関する登記が記載されます。甲区の登記内容を順を追って見ることによって、その不動産の所有権が、いつ、どのような理由(売買・相続等)で移っていったかという返遷を知ることができます。
「乙区」には、所有権以外の権利、すなわち抵当権、地上権、先取特権、質権および賃借権の設定変更、移転および消滅の変遷が記載されます。
登記簿作成の範囲は
不動産1個ごとに登記簿を作ります。
建物は、1棟ごとに外見上はっきり区分され独立しています(ただし区分所有建物は除く)ので、登記簿を作成する単位についてあまり問題はありません。
ただし、居宅(住居のこと)や車庫や物置のように、複数の建物が機能面から一体として利用される関係にあるときには、居宅を「主たる建物」とし、車庫や物置を「付属建物」として、同一の登記簿に記載します。
一方、土地については、登記簿作成の単位を決めることは、そう簡単ではありません。土地はケーキを切るように実際に分割して区分することはできず、比喩的にいえば、線を引いて区分するにとどまります。このように人為的に区分された土地は、「筆」という単位を使って数えます。登記では、1筆の土地を1個と数え、地番をつけて区分し、独立した登記簿をつくります。
さらに面倒なのは、「筆」は登記上の単位であり、現実の利用区分とは必ずしも一致していないことです。複数の土地がまとまって利用上の1単位を形成し、その上に1棟の建物が建っていることもあります。また逆に、1筆の大きな土地の上に複数の独立した土地が建っていて、1筆の土地が利用上は数個に区分されていることもあります。
また、1筆の土地を2筆以上に分けること(分筆)や、数筆の土地を1筆に合わせること(合筆)ができます。
コメント