登記簿謄本からの権利関係の調査

デュー・ディリジェンス

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日本では、土地と建物は、それぞれ別個の不動産とされているので、土地と建物のそれぞれに不動産登記簿謄本が整備されています。この不動産登記簿謄本は、「表題部」(土地・建物の所在などを記載)「甲区」(所有権に関する事項を記載)「乙区」(所有権以外の登記できる権利に関する事項を記載)の三つから構成されています。

表題部とは

不動産の顔ともいえる表題部には、土地については、所在、地番、地目、地積などが記載され、建物については、所在、種類、構造、床面積などが記載されています。

このなかで、実務上、特に注意しなければならないのは、土地の場合は「地目」と「地積」、建物の場合は「床面積」です。たとえば、土地の地目が田や畑になっている場合には、農地法の手続き制限を受けますから、仮に現況が宅地や駐車場になっていたとしても、ただちに、そこに建物を建築することは困難です。

また、土地の地積についても、専門家による測量を行ってみると、謄本上の地積と測量をした実際の地積とが大きく異なっている場合があります。同様に、建物の床面積についても、違法建築などがあれば、謄本上の床面積と、測量をした床面積は違ってきてしまいます。

マンションなどの区分所有の場合には、一棟の建物と専有部分のそれぞれに表題部が用意されています。区分所有建物の専有部分の床面積は、不動産登記法により、その区画の「内導線」で算出されます。これに対し、区分所有以外の建物の床面積は、壁の「中心線」で算出されていることに注意が必要です。

甲区欄とは

甲区欄には、不動産の所有権に関する事項が記載されています。したがって、今現在の所有者が誰であるかの確認は、この甲区欄を見て行うことになります。

甲区欄には、不動産の所有権移転登記の歴史や、今後の権利移動を予想させる所有権移転登記の仮登記、差押登記、仮差押登記などが記載されています。

乙区欄とは

乙区欄には、所有権以外の権利が記載されています。すなわち、地上権、地役権、永小作権など、他人の土地を利用する場合に設定される用益物権や、抵当権、質権などの担保物権、さらには、不動産賃借権や抵当権設定の仮登記、賃借権設定の仮登記などが記載されています。

ここで、特に注意が必要なのは不動産賃借権のうち、「短期賃借権」が指定されている場合です。短期賃借権の有効期間は、土地が5年、建物が3年となっています。この短期賃借権が設定されている不動産を購入した場合に、購入者が、仮に現在入居中のテナントに引き渡しを要求したとしても、この有効期間内は、テナントはその引き渡しの要求に応じなくてもよいことになっています。この短期賃借権は、抵当権が設定された後に賃貸されたものであっても、その有効期間内は、抵当権者に対抗できる(引き渡さなくてもよい)ものとされています。

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